ベトナム戦争時代の沖縄についての作品を作りたいと思い、アメリカに渡ってある退役軍人にインタビューを行った。サンフランシスコ郊外にあるヘイワードという町に、ゲイのベトナム退役軍人がバーを切り盛りしている。

彼はベトナムから帰国後、男性の恋人ができて奥さんと別れ、ドラッグやアルコール漬けの生活を送るようになる。そんななかでゲイバーを始め、ゲイ解放運動に参加し、その活動を通してどうにか立ち直って行く。当時はハーヴェイ・ミルクが居た時代で、彼らと共闘していたこともあったらしい。沖縄に滞在は?と聞くと、ベトナムに渡る前にほんの少しいたけれど、ほとんど記憶にない、という。少し前から、ゲイバーという名称を自身の店に使うことをやめて、セクシャリティーやジェンダーの境なく誰でも来れるように、ただの「バー」にしたんだ、と彼が嬉しそうに言っていた。子供はいたのかな、とふと考えが浮かんだけれど、その質問だけはなぜか出来ずに、僕はインタビューを終えて小さな町を後にした。




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